「 春からぼくは、 」/PULL.
 




十。



こんな人生も悪くない。
とりあえず今はそう思ってる。
いずれどこかの暇なヒーロがやって来て、
ぼくらをやっつける。
その時まで、
なのかも知れないけれど。
それでもいい。

ぼくはここにいて、
先輩の側にいて、
先輩を感じて、
生きている。
まいにち、
毎日を。

ぼくは幸せだ。
ぼくはあの日まで、
一秒たりとも生きていなかった。
あの日あの時、
先輩に出逢うまでは。






十一。



あの日、
ぼくの人生は百八十度変わった。
基地の監視モニター映る先輩の姿に、
ぼくの目は、
釘付けになった。
恋だった。
はじめての恋だった。

そして、
ぼくはヘルメットを脱ぎ、
ベルトを捨て、
正義を捨てた。












           了。


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