埋葬/はじめ
のおでこを優しく撫で前髪を浮き上がらせる 僕の体は少しずつ透明になっていった 目頭が熱くなってきた 握り飯を一気に頬張った 口の周りに米粒がついていることも知らずに僕は腕で目をゴシゴシと拭いた 一瞬桜で満ちた街並みが見えた しかし再び見てみると 僕の時間の概念を破って 季節を急かす新緑で輝く君の街があった 僕はもうこの時代にいられないのを悟り 幹に頭を預け 視界が曇ってきてゆっくりと目を閉じていった 街の地響きに似た声が聞こえた 地面に落ちた握り飯の欠片を 蟻達が集まってきて せっせと巣へ運んでいった この木から眺めた君の街の春の記憶は きっといつまでも永遠に僕の心に残るだろう
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