連作「歌う川」より その3/岡部淳太郎
 
祈る人は知る
自らもまた
ひとつぶの水であることを



川に浮かぶ島
{引用=
川は
いまや大河としての風格を誇り
滔々と流れている
祈る人は歩く
いまや広大に領土を拡大した
川原の上を

大河と化した川の中に
島が浮かんでいる
そこには舟が繋がれており
人が住んでいた

祈る人が佇んで
島を見ていると
舟が
彼のいる川原を目指して漕ぎ出された
舟には老人が乗っており
祈る人に云った
――ようこそ、我らの島へ。

このようにして祈る人は
島へ招かれた
島には高床式の家が建てられており
ひとつの大家族が住んでいた
彼等は上流から流れ
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