『レクイエム・レモン/ひかり』/川村 透
の入った小瓶を置く。
煮える真夏のコンクリートにレモンは匂うように瓶ごと溶けて
その抗ヒスタミン剤の効果なのか、
太陽は熱を和らげ薄くやさしさを取り戻す束の間
僕は君と手をつないで堤防から砂浜へと降下する
湿った砂の上に僕たちは世界線を引く、
ドキドキするようなホンモノを描いてみせるんだ。
そうか、こう、なのか。こう、か。わかった!、二人はとうとうハッケンしたんだ
堤防に腰掛け手をかざし、熱っぽい目で太陽を見つめたままの
兄にホントウのコトを早く伝えたくて身振り手振り交えて、それ、を
口にするともう、
誰もいない、どこにもいない兄も太陽も海も泡も砂浜も君も。
懐かし
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