Fetes(祭)2篇/角田寿星
 
道にさしかかる

 月。

(月ガ沈ミ我ラ 月ヲ忘ル
 忘ラルル月 昇リユク時
 我ラ赤児トナリテ照ラス
 初メテノ月 思イ出ヅル)
高速でまわる独楽を手のひらで受けとり
たわむ草 闇に浮かびあがる面
あかあかと燃える
切れた弦と 放物線と 失われた記憶の

 月。

月を視るのは誰もがはじめてだから
誰もがあなたの背中を 骨を 案じていた
はじめての月にいく 生野のみち
せまい昇り坂
はし がかり かがり ひ
火の粉が大地を舐めるように
這っていく くらい緞帳に
散らばり 舞 消える
(祠ヘト続キタル路ヤ 路ニ非ズヤ
 月ノアワヒニ続キタル 路ニ非ズヤ
 橋懸リナリ
 月ノ裏側ノ朱ニ染マル顔)

やがて すぐに 忘れられるだろう あなたの
あかい背中 舞 小さくなり おおきく揺らぎ
たかくかかげた 両手 何処からの 光を浴び
やみに ほむら 消える 背中 もう見えない
あなた 闇にたかく 舞台のむこう 浮かぶは

 月。



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