連作「歌う川」より その2/岡部淳太郎
 


遠くで呼んでいる
{引用=
また
もうひとつの朝
祈る人は いつものように目醒める
いつものような 川の歌
いつものような 川沿いの歩行
いつものように
滞りなく
祈る人の一日は始まる

また
もうひとつの夜
祈る人の いつもと同じ眠り
石を枕にしての眠り
夢の中での眠り

そのようにして
いつも同じように
祈る人の一日があり
川の歌があり
そして
また
もうひとつの朝
祈る人は またもいつものように目醒める
それは
本当の目醒めではないが
とにかく いつものように
祈る人は目醒めた
その日は
川の上に薄く朝霧がかかっていた

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