連作「歌う川」より その1/岡部淳太郎
 
してすみやかに
流れている
そのふたつの川の間に立つ人類は
どのような人々であるのか
たとえ塵のような思いであっても
たとえ隕石の到来を拒みつづける魂であっても
人は
確かにこの地上に 在る
彼等もまた
ふたつの星の川のように
隊列を組んでどこかへと
流れてゆきながら

いまや
人々はあらゆる星の存在を
忘れてしまっているのだが
ただひとりの 淋しい
祈る人は
悲しまずにゆくのみである
朝になれば
当然のことながら
彼はふたたび川に沿って歩き出す
そして川の歌にあわせて
自らも歌うのである
それもまた
至極当然のことであるけれど





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