男になりきれない、女になりきれない、手紙。【つきあい。】/西瓜すいか
 
はいなかったが、彼女の中に見え隠れする怯えた少女の相手をするのは好きだった。
そして繰り返す性の宴も、嫌いではなかった。

彼女は壊れることを恐れたが、腕の傷は増えていった。

普通を求める彼女と、性を知らない私だった。

そこで私は男を利用することを思いつく。女を愛することが普通でないというならば、形式的にでも男を愛していれば、「みんな」は文句を言わないだろう。

そのとき、真新しい進学塾の校舎に、男がいた。
自信のなさそうな、線の細い、きれいな大きな手をした男だった。
きれいな手から、うつくしい文字と、うつくしい絵を描き出す男だった。

その教室のなかでただひとり、怖くない男だった。
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