78×109の黒紙に/ヨルノテガム
たまには 人を描いてみたいナ、と。
音楽を持った人、それで
赤ちゃんの丸みを内包している、
肩をいからせた男、それで、
右手を失くした、それで、
ピアノを身体の中に飼っている
背骨の中に優柔不断な
迷いらせん構造を巡らせている
顔という顔は特に無い、
棒状の頭部であり、
全体は流れるように歩み去る瞬間で、
群青色の筋肉の中には 火照った血管が
薄い夕日色に
透ける
彼がわたしに
「あなたが俺について
わかったことだけの
言葉をくださいナ」
と言う。
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