蜃気楼の彼方/アマル・シャタカ
罵りあうためにあなたを欲したのではなかった
ただ
ままならぬ人の世で瞬きの間だけでも
互いの鼓動を抱きしめることで
少し眠りたかっただけなのに
淋しさよりも悲しみを
罵声ではなく歌声を
それさえも持ち寄れなかった僕達は
一体何を求めていたのか
君の美しさが永遠を保障しないように
僕の貧しさも永遠を保障することはない
ましてや二人の命さえも
何かを信じて手を取り合うには
この世界は荒みすぎていたけれど
だからといって
互いの弱さまで責めることはなかった
僕の心が渇いたのなら
君の涙を舐め取ればよかった
君の心まで渇いたのなら
二人して雨に打たれればよかった
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