澄み渡った闇/カスラ
渦巻き星雲のひとつの腕の端から その中心を眺めると
彼方から届く淡いひかりは失われた過去の物語
それでも不条理で理不尽な道程は 決して届かない言葉を未来に向けて 打ち出さずにはいられなかった
八月二十九日にはじめて受け取った その朧げなメッセージは
どこか遠いところへ連れて行ってと望んでいたね
いいよ 連れてゆく そう答えたら
もう帰って来られない旅だよ とも言っていたね
その時 永遠の時間の内に取り込んでしまえていたらこんなふうに 探さなくても よかったのにね
したり顔のよけいなお節介どもがしやしやり出て
この腕にまとわり着き 最後の魔法を使えなくしたから
円環のうちに最悪の後ろ姿こそが 光に背中合わせしていることを 指し示してあげられなかった
今も遠くたよりない世界に彷徨っているなら
消えゆくような かそけき信号を
もう一度
その澄み渡った闇から
届けては くれまいか
…§…
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