病院にて/はじめ
 
でも僕は世界に一人だけしかいないような気分になった
 途中で行き詰まっていた詩の進み具合が堰を切ったように早くなった
僕はノートにペンで詩を書いている
 これまで書き溜めた詩を出版するのが僕の夢だ
 僕が死んだら親戚のおじさんに保険金で詩を出版してもらうように頼んでおいてある
 両親は既に死んだ
 兄弟はいない
詩を書き終えると僕は医師の許可を得て付属している教会に行くことに決めた
 教会は質素だが細工が細かなステンドグラスから光を通してカラフルに彩られていた
 僕が奥へ進んでいくと神父がにっこりと笑って僕に座るように合図した
 僕は最前列の椅子に座って神父から聖書を受け取り立ち上がって もう一人の神父がオルガンを弾くと賛美歌を歌った
 僕は神父の外国語の説教を聴きながら何度か立ち上がり その度に賛美歌を歌って 一欠片のパンと葡萄酒を貰って 最後にお祈りを捧げて教会を後にした
 部屋に戻ると夕日が西側に傾いていて 一番星が南西の空に輝いていた
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