病院にて/はじめ
 
 僕は窓際のベッドの上にいる
大きな窓からは鈴懸けの木が葉を張り巡らせているのが見える
 部屋は六人部屋で僕を含めて二人しか患者はいない
 僕は不治の病に冒されている
 五月の程良い温度の透き通りキラキラしたターコイズブルーの風が僕の胸元を優しく撫でる カーテンが静かに舞い上がる
 午後の日差しは暖かい 時々廊下を看護婦さんが忙しそうに歩いてくる 僕は備え付けの机に向かって詩を書いている けっこう順調に進んでいる
 神聖な雰囲気が胸の奥に染み込んでくる この世に神様がいると信じてもいいと思う
 たとえこの病気が治らなくても
 そういう人は世の中にいっぱいいるはずだから
 でも
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