丘を登る歌に急かされて私は喧騒さえ後ろ手にする/藤原有絵
乗り馴れない自転車を漕いで 漕いで
ああ この街って本当に猥雑
それを呼吸のように受けいる人
ぴりぴり緊張を走らせて通りすがりたい人
様々とは知っていますが
私はもちろん後者です
地下鉄の疲労の匂いに包まれるくらいなら
行けるとこまで自分の足で
心臓が破れそうな丘だって
孤独な気持ちひとつで私のもの
不適合者の烙印を賜る
いつかの春
零れ落ちましたよ
それは当たり前のように
悟りを開いたね
って 笑う友人を笑って過ごしましたよ
私たちは
ずっと向かっている
やがて等しく訪れる死の瞬間に
その事を意識しないで
生きる
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