*
風の匂いや若柳や小鳥に
こころがひとりでにほころび
つぼみがゆっくり花ひらくように
はるにかぜをひいてしまうこと
くしゅん
*
きらきらした風のなかで
うつくしいさびしさにたえかねて
ユリのくちびるの行方をさがしてしまう
春のよる
せつないぼくらの列はつづく
*
やがて
めざめる季節の底で
ぼくのちいさな
ちいさな練習帳に
とてもずるがしこいやり方で
溶けるさふらんの海
黄昏の終わりの声を
記す
*
空からゴーッって音がきこえる
きっと
ぎゅっと抱きしめてた手が
さよならしていく音なんだと思う
*
いつまでも
いつまでも待っている
春のおと