家に帰りたい/狩心
 
暗闇の中/外灯/マンションの光/走り抜ける自転車のライト
鈴虫の声/ざわめく木々/血に飢えた獣たちが横切る
ポケットの中から取り出した一粒の飴を
震えた手が地面に落としてしまう/砕け散った飴
踏み切りの音/誰もいない公園
ジャングルジムだけが昼間になり/風もないのにブランコが揺れている
人の形跡を追う/地面に残る足音
道に沿うようにして建てられている
絶え間ない電信柱に人々が磔にされている
カタツムリ/家/家の前に眠る車/衝突を繰り返している
距離と影で作られた立体/白いブロック塀が途切れて
現れた/夕日の面影が残る歩道橋を渡る
捨てられたビニール袋が散らばっている
少し高い位置から町を見下ろす
どこまでも続く道/置き去りにされた自転車
蜘蛛の巣にへばり付いたガムが蜘蛛を飲み込む
後退りして見上げれば星空/息は凍えそうで
バス停のそばに地蔵様がいて/居酒屋からは白い煙が立ち昇っている
家に帰る為に左へ曲がりたいのだが/左へ曲がる道が一本もない
蚊の飛ぶ音が耳の中でこだまする/野良猫の喘ぎ声だけが
虚しく響いている

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