ババロア/よだかいちぞう
いても
驚かず、なにも関心を示さないようだった
ぼくも、彼女と出会う前に
服を濡らした人とこんなところですれ違ったとしても
別になにも思わなかっただろ
そんなことを考えながら彼女と歩いていると
ぼくはなにかいままでずっと
勘違いして居たんじゃないかという気がしてくる
けれどもびしょびしょに濡れた服は
誰の目にも彼女の体に貼り付いていて
あまり心地よさそうには見えなかった
彼女はババロアの話をしようといってきたので
ぼくたちは歩くのをやめて
ババロアの話をすることにした
ババロアはヨーグルトの偽物だとか
ババロアはプリンのできる前のもので
プリンができる前まではみんなババロアだったのだけど
プリンが出来てしまったから
ババロアだったところはみんなプリンに取って代わってしまって
ババロアは廃れてしまったんだとか
そんな意味の無いババロアの話を彼女は熱心にした
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