唇に雨粒/
蒼木りん
い
話すことなんか
何もない
誰とも
世界が違うから
違うと
そうだを
確かめるための密会になる
天秤はいつも揺れて
傾いたほうに
今はいるから
寂しくなんかないし
楽しくもない
モクレンに
無数の白い鳥がとまる
女の手のような花
隣の芝桜を
羨まない
私も手に入れたから
誰も知らない
私がいた
それだけでいい
これでも
年寄りでも
子どもでもないから
黒い背広は急ぎ足
唇に雨粒
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