アトリエ・スロウ/千波 一也
 

 砂時計という名の幽閉(ゆうへい)を描くべき色彩に迷い、
 指先ひとつで幾度も幾度も
 流れをもてあそんで
 みる

 (ここは、アトリエ・スロウ
 (時の許しに並ぶ場所



 日没とは、
 未完の代名詞であることを、
 証すべき旅路の、方角を委ねる羅針盤に、
 相応しい台座の高さを思案しながら、
 黎明(れいめい)の刻を、迎えて、
 みた

 (そこは、アトリエ・スロウ
 (時の拒みに並ぶ場所



 架け橋としての虹
 いや、あれはそのまま
 生きた姿とすべきだろうか
     
 うすい硝子を衝立(ついたて)にして、
 にわか雨にあらわれるふたつの顔は
 とおい昔と
 真逆の昔

     
 いまも変わらず
 在り続ける空だから
 おもいでの向こうは傾きやまずに、


     
 (あれは、アトリエ・スロウ
      
 (時の境が近い場所
 (時の扉が遠い場所

     
 絵筆の運びは
 こころのまま、に






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