さ く ら/川口 掌
い そう思い
お見舞いに訪ねた私に由美子姉さんは言いました
「去年は桜が見れなかったの。今年はちゃんと見たいわ。」
その言葉に由美子姉さんと由美子姉さんの家族と私とでお花見に出掛けました
少し肌寒いそんな日でした
満開の桜の中 由美子姉さんの顔は
とても穏やかでした
「きれいね
さ く ら 」
由美子姉さんは とても小さな声で呟いて
そして 微笑んでいました
桜舞い散る春の昼下がり
誰はばかる事なく啜り泣く声だけが響いていました
「きれいね
さ く ら 」
その言葉が私の中で
何度も何度も木霊しています
私は 心の中で
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