鴉達の止まり木/智鶴
数年前の夏の暑い日でした
私は確かにこの場所で
眠れない夜を過ごし
眠らない夢を貪っていました
数年前の秋に
私は運命(さだめ)を失いました
世界の闇よりもさらに深い夜が
全てを侵してしまったかのようでした
唯一つ
彼方から煌々と輝く窓が
私を見つけてくれたのです
夕焼け
鴉達は笑っています
空高くから私を、みすぼらしい私を見て
笑っています
包み暖めるもののない
彼らより真っ黒な私を
笑っています
私はその下で
運命を探し続け
未だに見つかりません
もしかしたら
とうに霧散してしまったのかもしれません
それならば
どうか私を
鴉達の止まり木にして欲しいのです
真っ黒な立ち姿は
夕焼けの朱に
よく映えることでしょう
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