深度/朽木 裕
 


僕が死ぬまで生きて隣で笑っていてね

夜はただただ深く深度は底が見えないくらい、真っ暗
窓を開け放ってそこへ飛び込めば
きっと何処にでも、いける

身体の浮遊感がとまらなくて
もう、落ちはじめているのではないかと思う

「ちゃんとこっち向いて。何処にもいかないで、はこっちの台詞」

「うん、」

「死なないでよ、お願いだから」

愛してと懇願されないでいることは二人の間では周知
生きていれば必ず貴方を愛しているから
偶に死神に浮気をすれども

「死なないよ、死ねない」

こんなにも大切な命が目の前に輝いているんだもの

「幸せになろうね、」

こくり、と首を振りながら
こんなにもナミダが出るのはどうしてだろうと思う

愛を感じながら死ねたならそれでもいいと思うのは
裏切りか罪か

「泣かないで」

泣かせているのは僕なのかもしれないけれど

白い身体は水死体のようで
窓は夜の飛び込み台で
軋むベッドは狭小

この場所だけがただひとつのリアル。
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