夢/たかぼ
だ、と。しかし親の安心とは裏腹に私の不安は以前よりも強くなっていった。そもそも夢を見ていないのなら構わない。もともと眠りとは空になることだと思っていたのだから。しかし夢を見ているが思い出せないのは気になる。しかも生まれてこのかた一度もである。夢を見ているときは眼球が激しく動くと言われる。ある時は親に一晩中付き添って貰い眼球が動いたときに起こして貰ったりした。もちろん何の記憶もなかったが。
言いしれぬ不安を抱えたままそれでも月日は流れ、夢の記憶が無い、ということ以外は特に記憶力に障害はなく、希望の大学に入学し、そこで出会った女性と恋に落ちた。彼女とは社会人となった後に結婚した。やがて妊娠。そし
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