郷愁/霜天
 

ことり、ことり
と、
積み上げていく
どうしようもないものの、すべて
君はいくつかを拾い上げて
踵の辺りから
その分だけ君自身を零している


春になったら、新しい花を育てたくて
あの懐かしい道をなぞってばかりになる
この街はまだ何かを拾おうとしている
そんな、実感のない呼吸をここに見つけた気がして
窓を開ける、低い空が零したものが
いくつかは地下道にまで染み込んで
遠くない海へと落ちる

どうしようもないものの、すべて
なんでもないものの、かけら
混ざり合った夕暮れは懐かしい匂いがする
深いビルの谷間
流れない声の道
一つをなぞれば、届くような気がする
この指には何も、絡まないけれど
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