郷愁/霜天
実感
いつまで経ってもこの指には絡まない
終わる素振りを見せない工事現場が
点滅する、光を放って街の一部になる
もう、戻れないところまで来ているらしい
この指には何も、絡まないけれど
たくさんのものを枯らしてしまって
たくさんのものを捨ててしまった
望遠鏡から覗いた草原には大勢の人が
昔からそこにいたかのように、整列している
これから順番に
そこから順番に
綺麗な列を作って
緑の川の中に人、という文字を流していく
沈んでいくわけではなく
寒い呼吸を吐き出すでもなく
ただ、日常のあれやこれ、触れたもののそれやこれ
重い肩をおろしてしまうように
ことり
こ
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