バブルから遠く離れて━━とある放浪記━━/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
もきっと、その時幾分薄れたのだろう。
とりあえず手持ちの金でアルバイト雑誌を買い、池袋にある工場の面接場所に行くため電話をかけて池袋まで行ったが、面接を受けるのが何故か急にイヤになり、ああどうしようか、行かなきゃまずいなあ、などと思いながら改装される前の池袋西口公園の、横に丸い鉄のベンチに長い間座っていると、後ろの方から、軽いパンチパーマをあて薄いサングラスをかけて紺の背広を着た男が、
「やあ、きみ」
と私に声をかけ、こう言った。
「自衛隊、入んない?」
そして私は約一ヶ月もの間池袋の地方連絡所でタダ飯を食わせてもらって後、横須賀の武山にある自衛隊の教育隊に行く事になった。とりあえず放浪は終わりを告げる。
注 初出時より一部改稿
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