回廊/アンテ
いつの頃からだろう
頭のなかにたくさんの人たちが住みついて
入れかわり立ちかわり
わたしの人生に口を出すようになった
彼らはわたしの考えなどお見通しで
先回りして道を整備したり
背中を押してくれた
朝になるとちゃんと起こしてくれるし
泣きたい時は
ひとりでほっておいてくれた
彼らに従っていれば
たいていのことはうまくいった
わたしなんていなくても大丈夫だ
と思った瞬間
顔のない人たちがどやどや押しかけてきて
わたしを拘束して
薄暗い部屋に押し込んだ
扉が閉ざされて
鍵のかかる音が響いて
それきり静かになった
近所のカナコさんは
凧の糸のよう
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