陽炎/バンブーブンバ
 
君と歩いてゆきたいと思わない日々はなく
昨日歩いてきた道を今朝も歩いてきたのに
何も思い出せない
花びらの調べを思い出せない
時は僕をとっくに投げ出す
枕元に横転するラジカセ
真夏のサンフランシスコの海岸だろうか
きっと砂浜のパラソルにも潜りこめない
眩しすぎる渚の太陽
そんな音楽の白波に瞼を濡らされ
小猫は木暗い小道へ去ってゆく
さざれ石は繊維のような波紋をつくり
薄らそぼるアスファルトを
空のような何かの衒いをうけつつ
晩春の陽炎に
まんまと牽引されてしまっていて
歩道のないバス通りを耽り
黒く四角く抉られた朝陽に向かい
歩くのをとめて
縁石に腰掛けた


夏日の黎明
心無し
僕の影の明度を落とす




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