春の闇に咲く/九谷夏紀
イオードの信号機
あざやかな光が
交差点内のあちこちで
点滅してたり
色が変わって点いたり消えたり
まばゆさは潤むほどで
くらいなかのひかり
わずかなひかりも
このうえなく
あざやかで
うつくしく
やみがつくりだす
このうつくしい
にちじょうのひかりを
わたしはいまようやくてにいれることができたのだ
まっすぐな道の先に見える
光を目指した
見晴らしの良い道は距離感がなくなる
どこまでも続いて
その光は
強くて広大なものだったから
遠いけど近いような
錯覚、
それだけ
ここまで来たけどまだ先がある
それだけ
道の途中
左に
淡いグレーと滲んだ藍色が混じったような
夜を我がものとした
モクレンの白が
きりりと咲いて
春の闇の佇み方を私に教えた
モクレンの木の下に
ショートヘアのネコがいて
やけに気品がある風情
野良猫のくせに、
と
気が合った
しゃがみこんでいつまでも遊んだ
なまぬるい春の闇を過ごしたある夜
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