笑顔/松本 卓也
 
意味も無く天井を眺めると
ヤニで微かに濁る壁を通り越して
或る日の横顔が浮かんでくる

空間に溶け込んだ表情は
手を伸ばせば頬に触れれるようで
近づけば温もりを感じれるようで
あるはずの無いと思い知っているのに

写真に撮って残していたかのように
どんな時でも思い出せていた
交わした言葉の殆どを忘れたのに
どうして同じ顔を見れるのだろう

その顔の横で自分が浮かべていた
表情がどうしても思い出せない
きっと笑っていたんだろうけど
どんな種類の笑顔だったのかな

君と離れた日を振り返ると
面白くて大笑する事があれば
納得いかずに苦笑を漏らす事もあった


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