言霊/
 
度も見た事のない光を感じ
つられて歌った

娘は友達にもそれを歌って聞かせ
その友達は家族に歌って聞かせた

そうやってどんどんとその歌は広まって
世界中で歌われる頃には
まるで魔法のように
雨雲が散っていき
降り続けていた雨はぴたりと止んだ

太陽の光は雨水を蒸発させ
蒸発させては降らせ
木々をどんどんと成長させ
成長した木々は
淀んでいた大気を
吸っては吐いて清清しくさせた

清清しい空気を吸って
暖かな光を浴び
緑に囲まれた人々は
争いを忘れ
街の復興に努めた

科学者たちは
自分の行っていた実験の効果だと
口々に言ったが
人々はどこかで
あの歌のおかげではないかと思った

もう一度不思議な声で歌うあの声を聞こうと
今は始まりの街と呼ばれるようになった
あの街の人々が旅人を探したけれど
彼はもうどこにも見当たらず
今はあの歌だけが歌い継がれている

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