Don't give up/佐々宝砂
雨が降るので家の中にいる
猫は寝てばかりいる
雨が降らなくても寝ているが
雨が降るとよけいに寝てばかりいる
猫は役に立たないと思う
思うが
冷静に考えれば役に立っているのだろう
と思いながらコーヒーを飲む
ヘッドフォンからは古い音楽が流れて
情けない男が情けない声で情けない言葉を垂れ流す
ケータイにメールがやってきて
情けない男が情けない言葉を情けなく伝えてくる
こちらから伝えるべき言葉はひとつ
だけど私は黙っている
もう捨てようと思う古い大学ノートの中で
二十歳になるやならずの私が
ありえそうにない理想論を吐いている
は!
笑い飛ばそうとして開いた口は
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