吟遊詩人のオアシス/はじめ
いて 詩人達は食べ物で苦労することは無い 本当の楽園のようだ
鳥達は歌い 虫達は輝く 空は微笑み 森はゆっくりと揺らめく
詩人達はこの自然を全身に吸収してエネルギーを溜め 詩を詠う
詩人達はその詩で喜びが溢れ出し 体を揺らして合唱する
まん丸と太った落陽がゆっくりと西の砂漠に埋まっていく
オアシスでは夜の宴の為に準備で大忙しだ
やがて太陽が寝静まり 星が煌めいて 鋭利な三日月が雫を光らせた頃
詩人達の宴が始まる
切りつけた木々からは酒が滴り 詩人達は酒に酔いながら自分のご自慢の詩を詠う
飲めや食いや詠えやの大騒ぎで 大きな焚き火の周りで踊り暮れる
動物達や虫達はそっと息を殺し その様子を窺っている
やがて腹一杯になると詩人達は横になり 夢心地な気分で詠う
焚き火は消え 森は親密な静寂さと黒暗暗たる闇に包まれる
砂漠の獰猛な冷気はオアシスの中に入ってこず 詩人達は暖かさに守られている
まもなく日が明ける頃だ
吟遊詩人達のオアシスは 新たな一日を迎えようとしている
戻る 編 削 Point(5)