冴ゆる氷菓/茜井ことは
 
風鈴の音の鋭さを
緩和できなくなった空気の中で
アイスキャンデーを口に含むと
腕に痺れが走った後に
鳥肌が立った
こうなると
揺れているカーテンの音に時々混じる
遠くを走る車の気配のまばらさに
センチメンタルの小夜嵐が
吹き荒れずにはいられない


濡れていくアイス棒の
湿った木のにおいから
教室の床をフラッシュバックする
こんな風にして僕らは
いくつかある日常のパターンを
切り換えていく準備をするのだろうか
最近はあまり思い出していなかった君を
まるで義務かのように
埋めにくい小さな時間の隙間に
当てはめる、それはそれで愛しい日々に


好きなものはたくさんあった方がいい
どれにも同じ強さで
興味を注ぐよう、気を付けられさえすれば
きっと明日からはますます
氷菓は食べにくくなっていく



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