はつ恋/なかがわひろか
 
舌の味がしました
血が発する鉄の匂いを感じながら
けれどまたその味を嗜みたいと思いました
何度もしたいと思いました

その夜は眠れませんでした
胸の高鳴りがいつまでも止まず
私の心臓を振りかざす勇者の叫び声の様な
それをいなす群集の様な
大きな大きな音を立ててうるさいのです

祝福するのが恥ずかしいのか
それとも当たり前の儀式を通過しただけの私に
それほどの感想もないのか
朝はいつものように訪れました

私は太陽に微笑みかけます
しかし太陽は
きっと私に嫉妬しているのでしょう
雲に隠れてその輝きをあらぬ方向に向けてしまうのです
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