手続き/
たもつ
公園のベンチに腰をかけ
新聞を読む初老の男の人の手が
小刻みに震えている
新聞から文字がひとつ
またひとつと落ち
足元で意味とは別のものとなった
そのようにして人は幸せになっていくのだ、と
病院の待合室で聞いたことがある
男の人は新聞を折りたたむと
脇に挟み立ち去った
ベンチにはどこかの身体の一部と思われる
丸い影が置き忘れられている
それもまた幸せになるための手続きであると
どこかでまた聞くかもしれない
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