記憶の森/はじめ
本当は死を知られたくなかった動物達や昆虫達も君のことで嘆き悲しんでいる 彼らではどうすることもできなかったのだ ただ心を殺しながら死の間際の悲鳴を黙って聞いているしかなかった
蛆達もそうとは分からず 丸々太った後で後悔して そそくさと地面に落ちてしまった
森は異様な静寂さに包まれている 時折 動物達や昆虫達の悲痛に満ちた泣き声が聞こえてくるだけだ
人間達は必死に君の行方を捜している まだ生存しているのではないかという淡い期待を寄せながら
君は生きているように見える ただ黙って体の向きを変えているように見えるだけだ 風も遠慮して君を揺らしている
君は眠っているように見える 体をこちょばしたら笑って目を開けるような気がする
でも君は永遠に目を覚まさない
日の当たらない森は昼夜問わず暗い 君の白い顔と肌だけがぼんやりと闇の中で浮かんでいる
時が君を無くすだろう その代わり時は君を生命の中で鮮明に記憶させることだろう
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