妹/チェチェ
 
母はツヨシというけれど
本当に妹はツヨクなった
もともとシッカリした奴だったが
3月に長女を生んでさらにタクマしくなった

私の方はと言えば、少しは大人になって
社会の仕組みもわかってきて
今では主任なんて呼ばれているが

肝心なところは弱虫のまま

今日、脳梗塞で入院中の父が
末期ガンにかかり
体力的に手術も抗がん剤治療も
できないことを知った
もう時間の問題なのである

私はなにもできない自分が悲しくて
昔の思い出ばかりが出てきて
涙がとまらず
ただグシグシと泣いていた

妹はそんな私を抱きしめると
お父さんが一番楽な方法で
生かしてあげよう
まだ希望は捨てたらだめで
といった

幼い頃は、よくいじめて泣かした
学校に入ると勉強は私のほうができた
思春期はロクに話もしなかった
二人とも成人するとようやく親友になれた
そして、空白の時のなかで
いつのまにか妹はつよくなっていた

泣きやまぬ私と乳飲み子を抱きながら
生と死に真正面で向き合っている
妹がまぶしかった

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