地下鉄十六番出口から/たりぽん(大理 奔)
 
風が吹き抜けるたびに
路地から空を見上げる
鳥の影、あの鳥がまた
飛び越えていくのかと

見上げた先の色は様々で
いつも、すぐ忘れてしまうから
黒い影だけは憶え続けるのか
鳥のかたちに切り抜く
吹きだまりに積もるちっぽけな夢も
あきらめなければ嘘にはならない

言いわけをおぼえても
風が吹き抜けるたびに
路地から空を見上げる
誰にも悟られてはいけない
コートのポケットの中で
汗ばむほど握りしめた手

鳥の影、あの鳥がまた
信じた風に乗って旋回する
そう思えたから見上げる
失ったものの歳を数えないで
意味がないなどと、数えないで
いつまでも、ほんとうだと
コートのポケットの中で
汗ばむ手は、言いわけじゃない


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