霧雨のノート/
及川三貴
コンクリートの壁に
長く続いている雨が
滑らかに曲線の
渇き潤して垂れてゆく
寝息を立てて
ゆっくりと
沈下している灰色に
波動の存在を
信じた午後の
奇妙な光り反射している
アルミ灰皿に映り込む
庇の奥で
尾びれが俊敏に
水を掻き分けて
影を好むという習性に
重なる言葉
書き出す紙
呼吸の膜
吐き出す音
鉛筆の芯が軋んで崩れ
握った手から抜ける
ちから そんな
些細な絢爛をあなたに
知って欲しいと願った
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