ジプシー/水在らあらあ
ここ数日の嵐で打ち上げられた貝殻や流木の話を
夕日を受けて一人ぼっちで
波間に浮かぶウミスズメの話を
ねえ 海に沈んでから太陽はどこに行くの?
それはね きっとね
君の友達の国に行くんだよ きっと
君のお母さんはどこ?
オレンジ色の街灯がともり始めた浜辺の上の通りを指差す
真っ黒い瞳で
じっと俺を見つめたまま
小さく 汚れた指で
海岸沿いの歩道では
ジプシーの家族が
いつもと同じように色とりどりのスカーフを路上に並べて
白人のおばさんたちが足を止めて
夕暮れの浜辺は人よりもカモメのほうが多いから
ここにいたら
可愛い君は連れて行かれちゃうかもしれないよ
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