それからの孤島/石畑由紀子
 

私は独りで自慰をするしかなかった
匂いなら今もそこここに
残っている
けれど
本当はそんなもの
もう
何の意味もない


忘れない
ぬるい風が頬を撫でていた
あの真昼
二人は
何もかもから隠れてしまおうと決め
足元の影を折りたたみ
愛しいということだけを食料にして
堕ちてゆこうと
誓った
それ以来
愛しあうたびに
部屋にあったものは
どんどんと絶えていった
植物は枯れ
食物は腐り
ひとつ
またひとつ
命が命を落とすたびに
私は悦びの声をあげ
ますます激しくあなたを求めた


  気づいていたのね
  その先のことを

  惜
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