菜の花畑/九谷夏紀
 
と思っていた
あの風景はどのあたり
道が軽やかに平らに続く
私は楽になって
心地よくて
目には見えない黒いもやもやとした塊が
いつの間にか
吐き出ていた

海はひろいから
泣いている私も
怒っている私も
そのままでいさせてくれる
ここでひとときを過ごす人たちも
私をほうっておいてくれる

波の音は静かで小さく
けれども力強く内面に響くから
私が抱え込んだ諸々の事柄にもその波動が及んで
細かくなって
まるくなった

いつもより涙を伴わないのは
この海の景色と
この波の音が
私をからっぽにしてくれるからだ

偶然出会ったこの海に私は救われたんだろう
また来るかもしれない



菜の花畑が私の変わらぬ行き先



海を目の前に
私の心は菜の花の黄色を映し出している


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