おとうさーん/一絵
と呼ばれていたらしいですよぉ、フフッ」
じいさんは恰幅のいい腹をさすりながらいやらしく笑って呟いた。
「みなさんも、受験するときは考えるようにぃ。
その人みたいになっちゃうでしょぉ」
じいさん、笑う、笑う、笑う、
200万するらしいじいさん作の絵の前で。
誰かが窓を開けた。風が吹いた。生ぬるい暖房の風が何処かへ消えて。
オトウサン、私は呟いた。
じいさんはきっと、クラシックしか聴かずに育ったんだろう。
10年もの間浪人生という肩書き背負っていたオトウサン。
10年もの間、自分を信じて、何かを追っていたオトウサン。
じいさん、オトウサンはお前が思っているよりもカッコイイ男だぜ。
オトウサンはきっと資本主義なんて言葉知らねえハズだ!
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