フォーマルハウト/ダーザイン
巨大な石版にきざまれた
柘榴石の星座がきしむ
西の方に5分ほど
かちりと音を立てて静止していた時が進む
一億光年の夜が流れ
廃棄物処理場に水たまりのような鏡
割れた月が赤々と燃えている
鉛色の護岸に覆われた河のほうから
霧の匂いが漂いはじめた窓を閉じる
眠れぬ夜が茫々と白象の肌をなで
チェルノブイリの空には
放射性降灰が静かに降りつむ
かつて河岸段丘があったころには
誰もいない野原がどこまでもつづいており
深夜の魚群が吐く泡が
川上へゆらぎわたる風をやわらかく包んでいた
一本の送電線が天の楽譜をつまびくと
小さな街灯の明るみのなかで
ときには懐かしい
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