匂い立つ四月/atsuchan69
頭を持つ蛙
みっつ、
女が産む筈だった三つ足の子供
四月――
匂い立つ、
草木の叫び
絶望の淵に追いやられた
言葉にもならない赤い声たちが
色鮮やかな火花を散らして
産業廃棄物とともに棄てられた、
すべての黄色く痺れた唇に
「成就せよ、と囁き
また一人、また一人倒れ
そして盛んに芽吹こうとする
言い知れぬ力が森から押し寄せてくる、
背後には南風が、のどかな陽射しを連れ
花弁を散らして見渡すかぎり野も山も匂い立つ
春爛漫の景色に
女は死絶え、ふたたび春に埋もれ
ただ、その瞳に君を映し
白いブラウスは土色に汚れて
摘まれ、踏みじみられた命の
その声にもならない叫びは、
腐敗した肉の
君が棄てた女、そのもの
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