お気に入りの棺桶/なかがわひろか
子供の頃おねだりして買ってもらった棺桶に
私は宝物を詰め込みます
等身大のお人形
お気に入りのドレス
ママが毎晩読んでくれた可愛い絵本
最後に私が入る場所を空けて
焼かれ灰になる日を心待ちにしています
眠る前に今日まで生きた日々を指折り数え
指が足りなくなったら
ママの手を借りて
それでも足りなくなった頃に
私は眠りにつきます
朝目が覚めたとき
少しの失望が頭をもたげます
けれどそれは死への新しい一日の始まりです
私は秒読み始める空気を体いっぱいに吸い込んで
大好きな花を摘みに行くのです
いつもの草原で
一人の紳士
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