箪笥/たもつ
 

箪笥の奥には
凪いだ海がしまわれている
微かに潮の匂いが漂っている
妻は夕暮れの淡い光に
静かなシルエットとなり
折り目正しく丁寧に
洗濯物を畳む
その姿は僕らの感傷を代弁する
何か一文字に似ている
すべてが終わると妻は立ち上がり
箪笥にしまう
明日という日はこのようにして
繰り返されていく
だから僕らの下着は
いつも少し湿っている

戻る   Point(17)