不眠症の話/明日葉
 
冷たい部屋の中で
褪せたざぶとんに丸まり
もうひとつの世界へアクセスする

しけった煎餅とぬるい紅茶だけが
私の体温を上げてくれる

此処は
何でもあるし何にも無い


どこかの家のボイラー音が聞こえる

「朝帰りの」?


ダブルクリックとスクロールが
私だけのリズムを刻む、 刻む

本当は、

液晶画面の向こうには
誰も居ないって分かっている







あたたかい
白い針が
真っ赤なカーテンを刺繍して


ようやく、

私の黒い時間が
光る朝に侵食されていく

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