在る男は一目ぼれの恋をこう言い訳た/瑠音
襲ってきた願いが
貴方に似ていた。
深夜の宴が何度目かの乾杯を迎える頃
僕たちはまだ少し冷たいテラスで
指切りをすることと同じ意味を持たせた
短い 短い キスをする
まるで儀式のようだ
そんなものに何の意味もないことを
よく よく 理解した上での儀式
薄紫色の髪飾りをそっとはずして
僕の口元にそっとあてれば
君は返してと微笑んで
そして
僕を
迷路に落とす
唐突に襲ってきた願いが君に似ていた
いつからかそっとそっとそっと
そっとすることでしか
忘れられなかった願いに
君の指先が
それ以上にそっ と
触れたとたんに
はじけた
好きだと口にするには短すぎる時間が
手を伸ばすには近すぎる距離が
言わせた言葉は
”さよなら
そして宴は
最後の乾杯を
貴方に似た願いは
貴方に似た願いは
ねえ
願いは
叶わないから
美しいのですよ
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